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『水晶の舟・望月治孝・菊/レコ発東北ツアー』レポート    報告者:SADI、写真:A.K.

 

水晶の舟のCD発売を記念して行われた東北ツアーの模様を詳細レポート。

東北ノイズシーンの一端が今明かされる!?

This is report of live tour of suisyou no fune and other two artists through the northastern aria of japan.

 

2005年、怒濤の東北三連ツアー

「水晶の舟」影男(guitar,vocal)・紅ぴらこ(guitar,vocal)

「望月治孝」(alto saxophone,vocal,noise)

「菊」mado(violin,clarinet,reading)・ちだ原人(percussion,voice)・ガン ベ(bass)

◆9月7日・盛岡「club Change」

盛岡ではここだけというライブハウス「club Change」でリハを行っていると、影男 さん、ぴらこさん、望月さんの三人が会場に現れた。水晶の舟とは少々はにかんだ再 開。望月さんとはこの日初めてお会いしたのだが、すぐに打ち解け合えた。

ライブは 望月さんのソロで始まった。会場に入るとステージではなく上手側の客スペースにマ イクと椅子がセットされてあった。望月さんはステージは苦手らしい。囁くような震 える歌、ブレスと炸裂するアルト、そしてまた歌とアルト。ものすごい緊張感を残しあっという間に望月さんのソロは終わった。

おしゃれハンターXX 、天真爛漫と盛 岡のユニットを挟んで、私たち菊の出番。程良い広さの会場は黒で統一されていて雰 囲気は怪しげだった。楽器の鳴りは良かったのだが、マイクのモニターが聞こえなく て朗読は少々辛かった。それでもそれなりに無駄のない演奏はできたように思う。

その後、髪を立てた盛岡のパンクバンドWEEDと続いて、最後は水晶の舟。音調整を兼ねながら次第に厚くなる二人のギター。爆音なのにその音はとてもきれいで、セッティ ングの巧さに驚かされた。30分ずつという短い持ち時間だったが、それぞれの味を出 し合ったライブだった。(写真=水晶の舟)

 

◆9月8日・石巻「cafe SADI」

南三陸の港町、総面積12坪という小さなカフェで行われたツアー二日目。この日も望月さんのソロから始まった。丸椅子に座って顔をマイクに近付けると、店内には俄に 緊張感が漂ってきて、全身を振るわせた囁きともとれる望月さんの歌がそれをさらに 張りつめさせた。短い曲を歌い終わると徐にアルトを持ち、前のめりのポジションか ら少しずつ息を吐き出す。音の生まれる瞬間を感じながら次第に彼のブレスに引き込 まれてゆく。緊張感がピークに達した瞬間、鋭角的な炸裂音によってブレスは一気に 掻き消される。床に滴る汗やら唾液やらが小さなクリップライトに浮かび煌めく。亀烈解体するサックス音に、私の中にひきこもっていた感情は次第に体を奮わせはじめ る。望月さんも全身を振るわせていた。ネックを外してリードを取り替える彼の動き そのものも魅力的だった。コンタクトマイクを付けたタンバリンを、抱えた小さなギ ターアンプに擦りつけてノイズを発し、苦しそうに歌う。まるで何かに憑かれたよう にひたすら藻掻く望月さんに、いつの間にか私自身取り憑かれてしまった。

セッティング中もほとんど会話はなく、店内に流れる賛美歌がやけに感情を刺激して くる。望月さんが乗り移ったまま菊の演奏は始まった。パーカッションとベースのラ ガビートに私のバイオリンは突き動かされた。淡々と小刻みな演奏ができた二曲目 のクラリネットはマイクの接触が悪く、ほとんど生音だった。この日の朗読はやけに 声が通っていてすこぶる心地よかった。三曲目はドローンベースの上を漂うパーカッ ションとバイオリン。ここでも私は朗読をする。まだ望月さんから抜け出せない私の 朗読は最後まで妙なテンションの淡々としたもので、不覚にも感情の渦の中に入り込 んでしまった。その後フルテンのディストーションを踏み、一気に轟音ノイズへと突 入。狭い店内での爆音が気になったものの、後へは引けずにそのまま押し通す。音が 消えた後もしばらく放心状態が続き、なかなか機材を片付けられない。

そして水晶の舟。ここで聴く二人のサウンドは優しくきれいでとても美しいものだっ た。マイクに付けたディレイの調子が悪く、声が途切れたり生声だったりしたが、そ れを補って余りある流麗さだった。次第に音圧が増してくると、バックライトに浮か ぶ二人のシルエットはさながら舞のようだった。曲が進むにつれてそのサウンドはま すます深みを増してきて、とても二人とは思えないほど重厚に轟いた。場所に合わせ たのか、この日はスローテンポの歌を重視した曲が多かったようだ。後でそのことを 影男さんに訊くと、少し前の曲ばかり選んだとのこと。水晶の舟の奥深さを思い知ら された。最後は菊のパーカッションちだ原人を交えてのセッション。私の心配を余所 にいつになく真摯なちだ原人。悔しいが二人のサウンドに見事にはまっていた。(写真=菊)

 

◆9月9日・仙台「BIRDLAND」

ツアー最終日は仙台の老舗「BIRDLAND」。ここはハードコア連中のホームグランドで、 会場も控え室もトイレもどこもかしこも汚かった。が、それがまたいい雰囲気を醸し 出してもいた。菊や水晶の舟と交流のある仙台のふたり組ばるうむが先陣を切った。 ギターのkiyoさんとボイスのろみさん。

妖艶なばるうむの後はTELL YOUのギタリス トF.S.さん、盛岡と同じように客スペースでの望月さんとソロが続く。望月さんはラ イブハウスよりジャズ喫茶などの小さなカフェ空間の方が好きだと言っていたが、ラ イブハウスでのマイクと椅子だけのセッティングも叙情的でなかなかいいのでは思え た。

続く水晶の舟はやはりここでも美しかった。一曲目から音の洪水を見せつけられ、 やはり二人のサウンドメイクは抜群だった。この日は水を得た魚の如く延び延びとし ていて実に気持ちよかった。

私たちと何度か対バンしたことのあるSMALL PARTSの後、 菊へと突入。この日の演奏はさらに怪しさを増していて、最後はベースのガンベが弦 を緩めて叩き出し、危うくベースを壊すところだった。こうして菊の重低轟音ノイズ がツアーを締めくくった。 (写真=望月治孝)

(2005.09.19UP)

 

「水晶の舟」CD、japanoise.redordsより発売中

(好評に応えて増プレス実施)

『基本となる歌とギターの演奏が、混沌の中からくっきりと浮かび上がる。「水晶の舟」のノイズとは、喧騒や騒音ではない。人が蠢く、生理上の、生きるための 鼓動なのである。そのリズムを胸に刻み込んだ上でライブに臨むと、今まで聴こえなかった 音が体の中に侵食してくるのである。』宮田徹也 (日本近代美術思想史研究) 

「菊/Kiku Lage」、japanoise.shopで販売中

偏執狂的・批判的・纏足的。

東北シーンから飛び出したアヴァンノイズ音源。